けんいてん · 第1卦 · 上経
乾為天
The Creative / Heaven
卦辞
乾、元亨、利貞
けん、げんこう、りてい
乾は大いに亨り、貞しきに利し
乾為天とは
乾為天(けんいてん)は、易経・六十四卦の第一卦です。上卦・下卦ともに「乾(☰)」——天を象徴する三本の陽爻からなる三爻が重なり、六本すべてが陽爻という、純粋な陽気の極みを示す卦です。
「乾(けん)」は天そのものを意味し、創造・剛健・始まりを象徴します。万物の始まりを告げる卦として、易経は乾為天を第一番に置きました。その対となる第二卦「坤為地(☷☷)」が大地・受容・母を表すのに対し、乾は天・陽・父の原理を体現しています。
卦辞の「元亨利貞(げんこうりてい)」は、乾の四徳を表す言葉です。「元」は根源・始まり・善の長、「亨」は通達・成長、「利」は調和・収穫、「貞」は正しさ・貞固さを意味します。これは自然界における春・夏・秋・冬の循環にも対応し、創造から完成に至るまでの宇宙の根本法則を示しています。
この卦が出たとき、大きな創造のエネルギーが動いているサインです。ただし、その力を正しい方向に——「貞」の精神で——用いることが成功の鍵となります。
卦辞の解説
原文(周易)
乾、元亨、利貞
けん、げんこう、りてい
乾は大いに亨り、貞しきに利し
元(げん)——根源・始まり
すべての善の根源であり、万物の始まりを意味します。天が万物を産み出す創造力の本質です。
亨(こう)——通達・成長
物事が滞りなく通じ、成長・発展していくことを表します。陽気が満ちて、すべての命が育つ夏の力です。
利(り)——調和・収穫
万物が調和し、それぞれが本来の役割を果たすことで得られる恵みです。秋の実りに象徴されます。
貞(てい)——正しさ・貞固
正しい道を固く守ること。冬が命を内に蓄えるように、本筋を守り抜く力です。この四徳が揃うとき、乾の力は最大に発揮されます。
六爻一覧
| 爻 | 爻辞 | よみ・意味 | 吉凶 | |
|---|---|---|---|---|
|
第六爻 上九 |
亢龍、悔あり |
こうりゅう、くいあり 天高く上り過ぎた龍は後悔する。盛者は必衰を知るべし |
小凶 | 爻辞の解説を見る |
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第五爻 九五 |
飛龍、天に在り。大人を見るに利し |
ひりゅう、てんにあり。たいじんをみるによろし 飛龍が天を駆ける。理想的な状況で力が最大に発揮される時 |
大吉 | 爻辞の解説を見る |
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第四爻 九四 |
或いは躍って淵に在り。咎なし |
あるいはおどってふちにあり。とがなし 飛ぶか潜るか——選択の岐路に立つ。どちらも誤りではない |
平 | 爻辞の解説を見る |
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第三爻 九三 |
君子、終日乾乾す。夕べに惕若として、厲なるも咎なし |
くんし、しゅうじつけんけんす。ゆうべにてきじゃくとして、はげなるもとがなし 一日中精進し続けることで、危うきも乗り越える |
中吉 | 爻辞の解説を見る |
|
第二爻 九二 |
見龍、田に在り。大人を見るに利し |
けんりゅう、たにあり。たいじんをみるによろし 田に現れた龍。力が世に認められ始める好機 |
吉 | 爻辞の解説を見る |
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第一爻 初九 |
潜龍、用うるなかれ |
せんりゅう、もちうるなかれ 地に潜む龍。今はまだ力を表に出す時ではない |
小吉 | 爻辞の解説を見る |
構成する八卦
関連する卦
易子
乾為天は「始まりの卦」よ。でも、始まりって、もうすでに何かが動いている証拠でもあるの。
わたしがこの卦に学んだことはね、「龍は自分の時を知っている」ということ。焦らなくていい。準備している人間のところに、必ず天の気は降りてくるわ。
六爻それぞれに「龍の物語」があるの。初九の潜龍から上九の亢龍まで——どれもあなたの人生のどこかにある場面よ。じっくり読んでみてね。
易子
あなた、乾為天の意味を知りたいのね。それは正解よ——易を学ぶなら、まずここから始めるべきだと、わたしはいつも思っているわ。
乾為天はね、易のすべての卦の中で、もっとも陽の力が充ちた卦。天の徳そのもの——創造し、動かし、万物を育てる力を象徴しているの。
「乾」の本質は、ただ強いことじゃないのよ。龍が地に潜み、田に現れ、やがて天へ飛ぶように、正しい時に正しく動くことが「乾」の智慧。その段階を示すのが六つの爻なの。ひとつひとつ読んでみてね。