たくてんかい · 第43卦 · 下経
沢天夬
Breakthrough
卦辞
夬は王庭に揚ぐ。孚ありて号ぶ。厲あり。邑より告ぐ。戎を用うるに利しからず。往くところあるに利し
かいはおうていにあぐ。まことありてさけぶ。はげあり。ゆうよりつぐ。いくさをもちうるによろしからず。ゆくところあるによろし
夬は王廷で公に告げる。誠実に声高く訴える。危険を知らせる。武力によらず。進むに利し
沢天夬とは
沢天夬(たくてんかい)は、易経・六十四卦の第四十三卦です。上卦に「兌(☱)」沢、下卦に「乾(☰)」天を配します。五本の陽爻が力強く積み上がり、最上部の一本の陰爻を押し出そうとしている——小人を除き、正道を取り戻す決断の卦です。「夬(かい)」は「決断する・断ち切る・突破する」を意味します。
「王庭に揚ぐ」——決断は公の場で、公明正大に行う。「戎を用うるに利しからず」——武力・暴力を使ってはならない。正しい目的であっても、手段は正しくなければならない——これが夬の最大の教えです。
五陽一陰の形は、ほぼ問題が解決された状態です。しかしその最後の一陰(小人・問題)が最も油断ならない。「夬夬(かいかい)」——断ち切ることを繰り返し慎重に行う必要があります。
この卦が示すのは、問題に正面から向き合い、公明正大に決断する時です。力ずくではなく、正義を旗印に、言葉と誠実さで突破してください。最後の一歩が最も重要で、最も危険です。
卦辞の解説
原文(周易)
夬は王庭に揚ぐ。孚ありて号ぶ。厲あり。邑より告ぐ。戎を用うるに利しからず。往くところあるに利し
かいはおうていにあぐ。まことありてさけぶ。はげあり。ゆうよりつぐ。いくさをもちうるによろしからず。ゆくところあるによろし
夬は王廷で公に告げる。誠実に声高く訴える。危険を知らせる。武力によらず。進むに利し
夬(かい)——公明正大な決断
「夬」は単なる「断ち切る」ではなく、公の場で声高く正義を宣言しながら決断すること。秘密の謀略ではなく、天下に明らかな正道による突破です。
戎を用いるなかれ——手段を選ぶ
目的が正しくても、暴力・強引な手段は使ってはならない。正義の目的は正義の手段でのみ達成できる——これが夬の核心的な倫理です。
王庭に揚ぐ——公正な場で問う
問題を密室で処理せず、公正な場(王廷)に持ち出して正々堂々と議論する。透明性と公正さが、夬の決断を正当なものにします。
六爻一覧
| 爻 | 爻辞 | よみ・意味 | 吉凶 | |
|---|---|---|---|---|
|
第六爻 上六 |
号ぶことなし。終には凶あり |
さけぶことなし。ついにはきょうあり 声も立てずに去る最後の陰。しかし終には凶をもたらす。最後まで油断するな |
凶 | 爻辞の解説を見る |
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第五爻 九五 |
莧陸夬夬す。中行に咎なし |
けんりくかいかいす。ちゅうこうにとがなし 慎重に繰り返し決断する。中道を守れば咎なし |
平 | 爻辞の解説を見る |
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第四爻 九四 |
臀に膚なし。其の行次且たり。羊を牽いて悔亡ぶ。言を聞けど信ぜられず |
しりにはだなし。そのゆきしゅしょたり。ひつじをひきてくいほろぶ。げんをきけどしんぜられず 進み方が覚束ない。羊を引いて進めば後悔なし。言葉は信じてもらえない |
平 | 爻辞の解説を見る |
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第三爻 九三 |
壮んなり頄に。凶あり。君子、夬夬す。独行して雨に遇う。濡れ慍れば咎なし |
さかんなりほほに。きょうあり。くんし、かいかいす。どくこうしてあめにあう。ぬれていかればとがなし 君子は慎重に決断を繰り返す。雨に濡れても怒らなければ咎なし |
平 | 爻辞の解説を見る |
|
第二爻 九二 |
惕号す。莫夜に戎あり。恤うるなかれ |
てきごうす。くれなわにいくさあり。うれうるなかれ 警戒して叫ぶ。夜中に危険が迫る。しかし恐れるな |
平 | 爻辞の解説を見る |
|
第一爻 初九 |
壮んなり前趾に。往けば勝てず。咎あり |
さかんなりまえあしに。ゆけばかてず。とがあり 足元の力に頼って進もうとする。勝てない。咎あり |
小凶 | 爻辞の解説を見る |
構成する八卦
関連する卦
易子
九三「壮んなり頄に。凶あり。君子、夬夬す。独行して雨に遇う。若しくは濡れて慍れば咎なし」——顔を怒らせて立ち向かう。でも君子は慎重に決断を繰り返す。濡れても怒らない。
これはね、決断の難しさを示しているの。小人を除こうとすると、自分も少し汚れる(雨に濡れる)ことがある。でもそれを怒ったりしなければ咎なし。清廉さを保ちながらも、現実の汚れを恐れない覚悟が必要よ。
上六の爻辞「号ぶことなし。終には凶あり」——最後の陰爻(小人)は声も立てず、静かに去るようで、実は終には凶をもたらす。最後まで油断せず、正道を守り続けることが夬を完成させるの。
易子
あなた、沢天夬を調べているのね。「決断・突破」の卦よ。五本の陽爻が、最後の一本の陰爻を押し出そうとしている——もうすぐ決着がつく場面ね。
でも易はここで「戎(武力)を用いるな」と言うの。正しい目的のためでも、暴力・強引な手段を使えば、それは夬にならない。「王庭に揚ぐ」——公の場で、正々堂々と声高く告げる。これが夬の決断の形よ。
最後の一歩が最も油断ならないのよ。五つの陽が一つの陰を相手にしているから楽勝に見えるでしょう?でも易は「厲あり」——危うさがある、と言う。最後まで気を抜かないで。